寺山修司没後40年記念認定事業<br>第十一回公演『奴婢訓』

寺山修司没後40年記念認定事業
第十一回公演『奴婢訓』

日時 2023年9月1日(金)~24日(日)
上演時間140分
※追加公演を含め20ステージ開催
会場 愛知・七ツ寺共同スタジオ

主人不在の中、下男下女たちが交代で主人役を演じるこの邸に、ある晩一人の男が訪ねて来た。

築き上げた権力も家庭も会社も国家さえも、燐寸一本の火で全ては消失する。
人はいずれ死ぬ。だからこそ、この人生を謳歌する。
わたしたち奴婢は主人の座を奪い合う逆転劇を日本というお邸で強烈に演じ続ける。

作|寺山修司
演出|渡部剛己

出演|
田口佳名子、 赤木萌絵
中居晃一、 安部火韻(愛蘭珈琲)、 麓貴志(ろーまの平日)、 ナオミ、 鈴江あずさ、 田上まみ、 池田豊、 左合陽裕

音楽|赤木萌絵
音響|ヤスエタイラ、小嶋大輝
照明|橋本武文(HL tech design)
舞台装置|早馬諒(妄烈キネマレコード)
映像収録|村崎哲也(muvin)
メインビジュアル|大河原愛「Recalling Memories 8」
炊事|叶和泉
運営|坪井菜摘、 安部百夏、 春雨乃音、 赤木香里、 しばたみつよし、 嘉島菜乃、 櫻井春菜子
著作権|テラヤマ・ワールド
主催|体現帝国 共催|エス・エー企画 後援|愛知県、名古屋市


NUHIKUN -Directions to Servants-

In the absence of the master, a man came to visit this residence one night, where servants and servants take turns playing the role of the master.
The power you have built up, your family, your company, even your nation, all of it will be destroyed by a single match.
People will die someday. That’s why we enjoy this life.
We slaves continue to intensely play out this drama of reversal as we scramble to take over the position of our masters in the mansion called Japan.

Date 2022 November 18th-27th
Venue NANATSUDERA-KYODO-Studio

Text|TERAYAMA SHUJI
Director|Gouki Watabe

Performers|
Kanako Taguchi, Moe Akagi
Koichi Nakai, Kain Abel, Takashi Fumoto, Naomi, Azusa Suzue, Mami Tagami, Yutaka Ikeda, Akihiro Sago

Composer|Moe Akagi
Sound Operater|Taira Yasue, Daiki Kojima
Lighting Director|Takefumi Hashimoto
Stage Carpenter|Ryo Hayama
Video Recording|Tetsuya Murasaki
Main Visual|Ai Ohkawara「Recalling Memories 8」
Chef|Izumi Kano
Production Team|Natsumi Tsuboi, Momoka Abe, Nono Harusame, Kaori Akagi, Mitsuyoshi Shibata, Nano Kashima, Hanako Sakurai
Copyright|TERAYAMA WORLD

Produced by TAIGENTEIKOKU


【公演を観てコメント】

原作は知らないし、テラヤマがどうの主人がどうの下僕がどうの、そんなことはどうでもいいや。トニモカクニモ実に圧巻の、阿呆の阿呆による阿呆の為の阿呆に満ちた阿呆展示博覧会であった。
「雑」が徹底してなかったし、グシャグシャなとこがあったり、一寸長過ぎたけど、観ていてウズウズわくわく、ウレシクて堪らない心地になったよ。面白かった。
カッパは壁を垂直に駆け上がり、ハゲの頭頂部は見る見る空洞化し、半ハゲが跳び跳ね発狂し、モヒカンが八艘飛びで大地を揺らし、ゴーシュの額は割れケツは腫れ上がり、ナオミは有り得ない函から顔を出し、あずさは甘吠え、まみの上半身はネジ切れ、田口のリンカクは崩壊しカラッポの脳髄は八方に爆発し、骨折りの萌える歌姫アカギの邪眼は欺瞞に満ちた客達の汚れた魂を射抜き浄化した。そこでは確かに飛び切りの愚者愚者の愚者達が神々しくも光輝いていた。
七ツ寺共同スタジオが、久しぶりに雄叫びをあげて喜んでいたよ。
彼らはずっと虚実皮膜の向こう、似非の阿呆で溢れかえるチマタの世間の社会の世界とやらに、間抜けヅラして逆立ちしながらアッカンベーしてたんだ。アッパレじゃ。
ワタクシ天野天街は、彼らのような芝居はすることはないだろうし出来はしないのだが、何故か「ひとごと」ではない気がしてならないのだ。
と、客出しをするスタッフのTシャツの「TAIGEN」という文字をボンヤリ見ていたら、いきなり組み換えが始まり「TENGAI」になった。やはり、ひとごとではなかった。
未だ観ぬ迷える客達よ、迷わずロングランの七ツ寺に、さ迷い駆け付けることをお勧めする。
長丁場、ちんもろ阿呆王渡部を初め、健気で強靭で狂人な役者スタッフ達にイバラの幸あれかし!

天野天街(少年王者舘)



寺山修司の代表作『奴婢訓』を、迫力ある身体と見事な舞台美術・音楽・照明で今に蘇らせた体現帝国。
台詞は初演時の戯曲がベースになっていて、ほどよく物語性があるし宮沢賢治の言葉が随所にきらめいていて素敵。
一方、海外公演をへてスペクタクルが美的にも思想的にも洗練されたあとの寺山の定本版も参考にされていて、演出に工夫が見られる。
この作品から今、何を受け継ぐのか一案を示しており、観れば作品の尽きせぬ思想性をきっと体験できるはず。

野島直子(寺山修司、多和田葉子研究)



力の演劇だと思った。
想像力、体力、気力、身体能力、企画力。持てる限りのすべての力を熱烈に魅せつけてくれる演劇だった。
若い人に見て欲しい。叫び 跳ね回り 重く佇む演劇を目撃してほしい。負けてられない。やってみたい。もっとみたい。
そんな強い意志が身体の中でどんどん溢れ、いつの間にか自分の力になっていた。
滋養強壮、薬膳演劇。常に1000%の力で舞台に立ち続ける彼らを是非目撃してほしい。

尾崎優人(優しい劇団)